timeless floor
人はどうして 窓に向かって電話をする
眼下の光景は言葉に置き換えられてはいない
ビジネス・ステーション・ビルディング
ガラスの下に、時間が流れを止める
瀟洒な部屋がある
ここに滞在する恋人たちの退屈を思う
列車の天井って。汚い
そうだね、誰も見ないものだからと
嘆息する
ふだん見ない架線より上からの光景
巨大な車体の轟きに気おされて
突き飛ばされる感じが
いつの年になっても好きみたい
無表情で黙々と行き来する人々
足下で潰されるビニール屑
舞い、飛ぶ。
電話をする男のガラスの前に
虚空を眺める恋人たちの前に
摩擦して火花を放つ架線の横に
階下の豆粒のような人々の間に
行きたかった本屋の前に
出られなかった玩具屋の前に
止まらなかった車の前に
恋人たちは、別々のモニターを眺める
ふたりっきりというのは、幸福の欠片か
ここに滞在する彼らの退屈を思う